誰かを想い続ける美しさ。

貪るように1日で読んだ。向田邦子風な昭和の古き良き日本と、戦争に翻弄される市井の人々が描かれたお話。女中タキが過去を振り返り遺しておくべきと考え、時子奥様との思い出をはじめ、若い芸術家肌の板倉さんとの道ならぬ恋愛について書き出した一冊のノートを介し、甥の孫がその想いを継いで、最後のシーンは静かな衝撃が走る。

どんな時代も、人を好きになり、人の心を掴んで離さない人との関係が、人の歴史を作るものなんだなぁ。戦争のような運命を翻弄することが心を阻んでも、何かしらの形で美しい心は残るのだ。

女中という仕事は、誰でもできるものでなく、頭の良い機転のきくタキのような女でないと務まらない。家族の一員として過ごすうえ、一生を共にする位、濃い時間を過ごす。

誰かに服従しながら、それを肯定して生きることも、あの時代は選択肢のひとつとして確かに存在していた。

服従というよりも想い続ける、というべきか。そうした歴史を重ねて、今の私たちがあるのだなぁ。


#読書記録2018 #小さいおうち #中島京子 #戦争の爪痕 

ハザマの森

泣きたくなることも、時が経てば必ず笑い話にできる。私たちは、日々をそんなハザマに生きているのかもしれません。けれど、渦中にある時は、目の前の事象しか見えない。例えば、夕焼けが美しすぎる秋の日、空が溶けていくような色合いに胸撃ち抜かれてしまうように。今そこにあるモノ、コト、ヒト。心動かすそれらをランダムにフォーカスして、悲喜こもごもを言葉や写真で、味わっていこうではありませんか。

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